ぐに駈け寄って二人のあいだへ割ってはいった。
「おお、千枝太郎どの。ようぞ来てくだされた。この御僧《ごそう》は物に狂うたそうな。不意にわたしを捉えてどこへか連れて行こうとする。どうぞ助けてくだされ」と、玉藻は悩める顔を袖に掩いながら言った。
「御坊《ごぼう》。いかに狂えばとて、女人《にょにん》をとらえてなんの狼藉……」と、千枝太郎は叱るように言った。「静まられい、ここ放されい」
僧はなんにも言わなかった。白い鬚《ひげ》がまだらに伸びて、頬骨の悼《いた》ましく尖った顔に、窪《くぼ》んだ眼ばかりを爛々《らんらん》とひからせて、彼は玉藻の白い襟もとをじっと見つめていた。相手が執念深いので、千枝太郎はいよいよ急《せ》いた。
「ええ、退《の》かれいというに……。ええ、放されい。放さぬか」
彼は相手の痩せた腕をつかんで、力まかせに引き放そうとしたが、命のあらんかぎりと掴んでいるらしい僧の手は容易に解けなかった。血気の若者は焦《じ》れてあせって、折れるばかりにその手を捻じ曲げて、無理にようよう引き放して、突きやると、力の尽きた老僧は枯木のようにばったり倒れた。玉藻はそれを見向きもしないで、急ぎ足
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