、おれの引き籠っているのを幸いに、冠をのけぞらして殿上を我が物顔にのさばり歩く。その驕慢の態度が眼にみえるように思われて、忠通は急にいまいましくなってきた。うかつに遁世して、多年の権力を彼にやみやみ奪われるのは如何にも残念で堪まらないように思われてきた。
「さりとて、わしはこの通りの所労じゃ。頼長が兄に代って何かの切り盛《も》りをするも是非があるまい。余の公家《くげ》ばらは彼の鼻息を窺うばかりで、一人も彼に張り合うほどのものは殿上にあるまいよ」と、忠通は憤るように言った。勢いに付くが世の習いであることを、彼はしみじみと感じた。
その果敢《はか》ないような顔をじっと見あげて、玉藻はそっと言い出した。
「就きましては、わたくしお願いがござりまするが……」
「あらためてなんの願いじゃ」
「殿の御推挙で采女《うねめ》に召さるるように……」
「ほう、お宮仕えが致したいと申すか」
忠通はすこし考えた。玉藻ほどの才と美とを具《そな》えていれば、采女の御奉公を望むも無理はない。その昔の小野小町《おののこまち》とてもおそらく彼女には及ぶまい。実は忠通にもかねてその下心《したごころ》があったのであるが
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