案じらるるほどじゃ。我らとても同様の苦労、察しておくりゃれ」と、泰忠は蒼ざめた唇をゆがめながら言った。
「そりゃ容易ならぬことじゃ」と、千枝太郎もはらわたから絞り出すような溜息をついた。「それに就いてわしも思い当たることがある。子細はこうじゃ」
彼は兄弟子の耳に口をよせて、かの古塚のことや三浦の屋敷のことをささやくと、泰忠は眼をみはりながら聴いていた。
「むむ、よいことを教えてくれた。三浦のことはお師匠さまもわれわれも承知じゃが、古塚の怪異《あやかし》はまだ聞かぬ。よい、よい、きっとお師匠さまに申し上ぐる。お身もこれを功に御勘当が赦《ゆる》さりょうも知れぬ。この上にも心をつけて働いておくりゃれ。頼んだぞ」
兄弟子から鋭《するど》く励まされて、千枝太郎のしおれた魂も俄に勇んだ。彼はきっとその怪異を探り出すことを泰忠に誓って別れた。彼はもう悠々と京の町などをうろついてはいられないので、山科の家へ急いで帰った。
「きょうもくたびれ儲けか」と、なんにも知らない叔母は笑っていた。「したが、そのうちにはおのずとなりわいの道も覚えて来る。必ず倦きてはならぬぞよ」
気のよい叔母は彼の不働きを責めようともしないので、千枝太郎は幾らか気安く思った。そうして今夜こそは自分の務めを果たさなければならないと、張りつめた心を抱えて夜の更《ふ》けるのを待っていたが、どうも落ち着いてはいられないので、彼はゆうべよりも早く家を出て、陶器師の翁をたずねた。
「翁《おきな》よ。少し頼みがある。わしを小町の水の森へ案内してくれぬか。身内から光りを放った女が通り過ぎたというのはどのあたりか、案内して教えてくれ」
途方もないと言うように、翁はしばらく黙って相手の顔を見つめていたが、やがて思い出したようにその手をゆるく振った。
「ならぬことじゃ。くどくもいう通り、塚の祟りがおそろしいとは思わぬか」
「いや、それを見とどけたらわしも出世する。翁にも莫大の御褒美を貰うてやる。どうじゃ、それでも頼まれてくれぬか」
「はて、出世も御褒美も命があっての上のことじゃ。ましてわしも人づてに聞いたばかりで、詳しいことはなんにも知らねば、いくら頼まれてもその案内が出来ようぞ。どんな出世になるか知らぬが、お身もやめい。あのような所へは行くものではないぞ」
いくら強請《せが》んでも動きそうもないので、千枝太郎もあきらめてそ
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