えば、余の人びとは手の裏をかえしたようにこちらの味方になるのは見え透いている。なにも仰々しく誅伐の誅戮のと騒ぎ立てるには及ばないのであると、彼女は事もなげに説き明かした。
「就きましては、かの采女《うねめ》に召されますること、いかがでござりましょうか」
「その儀ならば懸念すな。今度こそはかならず成就じゃ」と、忠通は得意らしい笑みを洩らした。
 先度は頼長や信西の故障に出遇《であ》って、結局はうやむやのうちに葬られたのであるが、今度はそうはならない。玉藻が雨乞いの奇特をあらわしたことは雲の上までもきこえ渡っている筈である。その玉藻を推薦するのになんの故障があろう。たとい彼らがあくまでも強情を張ったところで、その理屈はもう通らない。彼らの理屈を蹴散らすだけの立派な理屈がこちらにもある。頼もしくもない味方を無理に駆り集めて、頼長らをほろぼそうとあせり狂うよりも、一人の玉藻を采女にすすめて、その力で敵を押したおす方が安全で且《か》つ有効であるらしいと、忠通もまた思い返した。
「予が受け合うた。大納言など頼んでいては埒があかぬ。近日のうちに、忠通が病気を押して昇殿する。とこうの故障を申し立つる者があったら、予が直きじきに言い伏せて見する。はは、今度こそ……今度こそはじゃ」
 忠通は気味の悪いような声を出して、のけぞりながら高く笑った。玉藻のひとみも怪しくかがやいた。

    三

「ほう、千枝ま[#「ま」に傍点]よ。いつ戻ったぞ」
 陶器師《すえものつくり》の翁《おきな》は笑いながら見返った。彼は手づくりの壺《つぼ》をすこし片寄せながら、狭い仕事場の入口に千枝太郎を招き入れた。
「この頃は家《うち》に戻っているとかいう噂を聞いたが、なぜ早う訪ねて来てはくれぬ。婆めは死ぬ。隣りの藻の家は引っ越してしもうて馴染みの薄い人が移って来る。ここらでも四年五年といううちには、住む人がだんだんに移り変わって、むかし馴染みの減るのが寂しい。して、お前はなぜお師匠さまの屋敷から戻って来た。都の奉公はつらいかの」
 千枝太郎は黙って、すだれの隙き間からさし込む秋の日が仕事場のぬれた土を白っぽく照らしているのを眺めていたが、やがて沈んだ声で言った。
「わしはお師匠さまから勘当《かんどう》された」
「勘当……」と、翁も白い眉に浪を打たせた。「なんぞ過失《あやまち》でもおしやったか」
「お師匠さまの
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