ころから十手を出す。)これを見て、神妙に覚悟をしていろ。
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(十右衛門は堪《たま》らなくなったように半七のそばに来る。)
[#ここで字下げ終わり]
十右衛 もし、親分。おまえさんはさっきから大分酔っていなさるようだから、まあ奥へ行ってちっとお休みなすってはどうでございます。店先であんまり大きな声をして下さると、世間に対してまったく迷惑いたしますから、兎も角もあっちへお出で下さい。これ、和吉。親分を奥へ御案内申せ。
和吉 はい、はい。(おずおず進み寄る。)もし、どうぞ奥へ……。わたくしが御案内申します。
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
(和吉は半七の手を取ろうとすると、半七はその横面をいきなり撲りつける。)
[#ここで字下げ終わり]
半七 ええ、なにをしやあがるんだ。手前たちのような磔《はりつけ》野郎のお世話になるんじゃあねえ。やい、やい、なんで人の面を睨みやあがるんだ。てめえ達はみんな主殺しの同類だからはりつけ[#「はりつけ」に傍点]野郎だと云ったのがどうした。手前たちも知っているだろう。(和吉の顔をきっと見る。)はりつけ[#「
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