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特務曹長「将軍、お申し訳けのないことを致《いた》しました。」
曹長「将軍、私に死を下されませ。」
バナナン大将「いいや、ならん。」
特務曹長「けれどもこれから私共は毎日将軍の軍装《ぐんそう》拝しますごとに烈《はげ》しく良心に責められなければなりません。」
大将「いいや、今わしは神のみ力を受けて新らしい体操を発明したじゃ。それは名づけて生産体操となすべきじゃ。従来の不生産式体操と自《おのずか》ら撰《せん》を異にするじゃ。」
特務曹長「閣下、何とぞその訓練をいただきたくあります。」
大将「ふん。それはもちろんよろしい。いいか。
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では、集れっ。(総《すべ》て号令のごとく行わる。)ション。右ぃ習え。直れっ。番号。」
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兵士「一、二、三、四、五、六、七、八、九、十、十一、十二、」
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兵士|伍《ご》を組む。
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大将「前列二歩前へおいっ。偶数《ぐうすう》一歩前へおいっ。」
大将「よろしいか。これから生産体操をはじめる。第一果樹|整枝《せいし》法、わかったか。三番。」
兵卒三「わかりました。果樹整枝法であります。」
大将「よろしい。果樹整枝法、その一、ピラミッド、一の号令でこの形をつくる。二で直るいいか」
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大将|両腕《りょううで》を上げ整枝法のピラミッド形をつくる。
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大将「いいか。果樹整枝法、その一、ピラミッド。一、よろし。二、よろし、一、二、一、二、一、やめい。」
大将「いいか次はベース。ベース、一、の号令でこの形をつくる。二で直る。いいか。わかったか。五番。」
兵卒五「はいっわかりました。ベース。盃状《はいじょう》仕立であります。」
大将「よろしい。果樹整枝法その二、ベース一。」
兵卒「一、」
大将「二、一、二、一、二、一、二、やめい。」
大将「次は果樹整枝法その三、カンデラーブル。ここでは二枝カンデラーブル、U字形をつくる。この時には両肩《りょうかた》と両腕とでUの字になることが要領じゃ、徒《いたずら》にここが直角になることは血液|循環《じゅんかん》の
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