。」一郎が言いました。
そのとき向こうの白い河原を肌《はだ》ぬぎになったり、シャツだけ着たりした大人が五六人かけて来ました。そのうしろからはちょうど活動写真のように、一人の網シャツを着た人が、はだか馬に乗ってまっしぐらに走って来ました。みんな発破の音を聞いて見に来たのです。
庄助はしばらく腕を組んでみんなのとるのを見ていましたが、
「さっぱりいないな。」と言いました。すると三郎がいつのまにか庄助のそばへ行っていました。そして中くらいの鮒を二匹、
「魚《さかな》返すよ。」といって河原へ投げるように置きました。すると庄助が、
「なんだこの童《わらす》あ、きたいなやづだな。」と言いながらじろじろ三郎を見ました。
三郎はだまってこっちへ帰ってきました。
庄助は変な顔をしてみています。みんなはどっとわらいました。
庄助はだまってまた上流《かみ》へ歩きだしました。ほかのおとなたちもついて行き、網シャツの人は馬に乗って、またかけて行きました。耕助が泳いで行って三郎の置いて来た魚を持ってきました。みんなはそこでまたわらいました。
「発破《はっぱ》かけだら、雑魚《ざこ》撒《ま》かせ。」嘉助が河
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