込んで、青白いらっこのような形をして底へもぐって、その石をとろうとしました。
 けれどもみんな底まで行かないに息がつまって浮かびだして来て、かわるがわるふうとそこらへ霧をふきました。
 三郎はじっとみんなのするのを見ていましたが、みんなが浮かんできてからじぶんもどぶんとはいって行きました。けれどもやっぱり底まで届かずに浮いてきたのでみんなはどっと笑いました。そのとき向こうの河原のねむの木のところを大人《おとな》が四人、肌《はだ》ぬぎになったり、網をもったりしてこっちへ来るのでした。
 すると一郎は木の上でまるで声をひくくしてみんなに叫びました。
「おお、発破《はっぱ》だぞ。知らないふりしてろ。石とりやめで早ぐみんな下流《しも》ささがれ。」そこでみんなは、なるべくそっちを見ないふりをしながら、いっしょに砥石《といし》をひろったり、鶺鴒《せきれい》を追ったりして、発破のことなぞ、すこしも気がつかないふりをしていました。
 すると向こうの淵《ふち》の岸では、下流の坑夫をしていた庄助《しょうすけ》が、しばらくあちこち見まわしてから、いきなりあぐらをかいて砂利《じゃり》の上へすわってしまいました
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