げ]
「ポッシャリ、ポッシャリ、ツイ、ツイ、ツイ。
はやしのなかにふるきりの、
つぶはだんだん大きくなり、
いまはしずくがポタリ」
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霧《きり》がツイツイツイツイ降《ふ》ってきて、あちこちの木からポタリッポタリッと雫《しずく》の音がきこえてきました。
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「ポッシャン、ポッシャン、ツイ、ツイ、ツイ。
はやしのなかにふるきりは、
いまにこあめにかぁわるぞ、
木はぁみんな 青外套《あおがいとう》。
ポッシャン、ポッシャン、ポッシャン、シャン」
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きりはこあめにかわり、ポッシャンポッシャン降《ふ》ってきました。大臣《だいじん》の子は途方《とほう》に暮《く》れたように目をまんまるにしていました。
「誰《だれ》だろう。今のは。雨を降《ふ》らせたんだね」
大臣《だいじん》の子はぼんやり答えました。
「ええ、王子さま。あなたのきものは草の実《み》でいっぱいですよ」そして王子の黒いびろうどの上着《うわぎ》から、緑色《みどりいろ》のぬすびとはぎの実《み》を一ひらずつとりました。
王子がにわかに叫《さけ》びました。
「誰《だれ》だ、今歌ったものは、ここへ出ろ」
するとおどろいたことは、王子たちの青い大きな帽子《ぼうし》に飾《かざ》ってあった二|羽《わ》の青びかりの蜂雀《はちすずめ》が、ブルルルブルッと飛《と》んで、二人《ふたり》の前に降《お》りました。そして声をそろえて言《い》いました。
「はい。何かご用でございますか」
「今の歌はお前たちか。なぜこんなに雨をふらせたのだ」
蜂雀《はちすずめ》はじょうずな芝笛《しばぶえ》のように叫《さけ》びました。
「それは王子さま。私どもの大事《だいじ》のご主人《しゅじん》さま。私どもは空をながめて歌っただけでございます。そらをながめておりますと、きりがあめにかわるかどうかよくわかったのでございます」
「そしてお前らはどうして歌ったり飛《と》んだりしたのだ」
「はい。ここからは私どもの歌ったり飛《と》んだりできる所《ところ》になっているのでございます。ご案内《あんない》いたしましょう」
雨はポッシャンポッシャン降《ふ》っています。蜂雀《はちすずめ》はそう言《い》いながら、向《む》こうの方へ飛《と》び出しました。せなかや胸《むね》に鋼鉄《こうてつ》のはり金がはいっているせいか飛《と》びようがなんだか少し変《へん》でした。
王子たちはそのあとをついて行きました。
*
にわかにあたりがあかるくなりました。
今までポシャポシャやっていた雨が急《きゅう》に大粒《おおつぶ》になってざあざあと降《ふ》ってきたのです。
はちすずめが水の中の青い魚のように、なめらかにぬれて光りながら、二人《ふたり》の頭の上をせわしく飛《と》びめぐって、
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ザッ、ザ、ザ、ザザァザ、ザザァザ、ザザァ、
ふらばふれふれ、ひでりあめ、
トパァス、サファイア、ダイアモンド。
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と歌いました。するとあたりの調子《ちょうし》がなんだか急《きゅう》に変《へん》なぐあいになりました。雨があられに変《か》わってパラパラパラパラやってきたのです。
そして二人《ふたり》はまわりを森にかこまれたきれいな草の丘《おか》の頂上《ちょうじょう》に立っていました。
ところが二人は全《まった》くおどろいてしまいました。あられと思ったのはみんなダイアモンドやトパァスやサファイアだったのです。おお、その雨がどんなにきらびやかなまぶしいものだったでしょう。
雨の向《む》こうにはお日さまが、うすい緑色《みどりいろ》のくまを取《と》って、まっ白に光っていましたが、そのこちらで宝石《ほうせき》の雨はあらゆる小さな虹《にじ》をあげました。金剛石《こんごうせき》がはげしくぶっつかり合っては青い燐光《りんこう》を起《おこ》しました。
その宝石《ほうせき》の雨は、草に落《お》ちてカチンカチンと鳴りました。それは鳴るはずだったのです。りんどうの花は刻《きざ》まれた天河石《アマゾンストン》と、打《う》ち劈《くだ》かれた天河石《アマゾンストン》で組み上がり、その葉《は》はなめらかな硅孔雀石《クリソコラ》でできていました。黄色な草穂《くさぼ》はかがやく猫睛石《キャッツアイ》、いちめんのうめばちそうの花びらはかすかな虹《にじ》を含《ふく》む乳色《ちちいろ》の蛋白石《たんぱくせき》、とうやくの葉《は》は碧玉《へきぎょく》、そのつぼみは紫水晶《アメシスト》の美しいさきを持《も》っていました。そしてそれらの中でいちばん立派《りっぱ》なのは小さな野《の》ばらの木でした。野《の》ばらの枝《えだ》は茶色の琥珀《こはく》や紫《むらさき》がかっ
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