二人の役人
宮沢賢治
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)その頃《ころ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)百|匹《ぴき》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#「初茸」はママ]
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その頃《ころ》の風穂《かぜほ》の野はらは、ほんたうに立派でした。
青い萱《かや》や光る茨《いばら》やけむりのやうな穂を出す草で一ぱい、それにあちこちには栗《くり》の木やはんの木の小さな林もありました。
野原は今は練兵場や粟《あは》の畑や苗圃《なへばたけ》などになってそれでも騎兵の馬が光ったり、白いシャツの人が働いたり、汽車で通ってもなかなか奇麗ですけれども、前はまだまだ立派でした。
九月になると私どもは毎日野原に出掛けました。殊に私は藤原慶次郎といっしょに出て行きました。町の方の子供らが出て来るのは日曜日に限ってゐましたから私どもはどんな日でも初蕈《はつたけ》や栗をたくさんとりました。ずゐぶん遠くまでも行ったのでしたが日曜には一層遠くまで出掛けました。
ところが、九月の末のある日曜でしたが、朝早く私が慶次郎をさそってい
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