よくよく心をしづめ耳をすまして聴くことは大切なのぢゃ。上《うは》の空で聞いてゐたでは何にもならぬぢゃ。」
ところがこのとき、さっきの喧嘩《けんくわ》をした二|疋《ひき》の子供のふくろふがもう説教を聴くのは厭《あ》きてお互にらめくらをはじめてゐました。そこは茂りあった枝のかげで、まっくらでしたが、二疋はどっちもあらんかぎりりんと眼を開いてゐましたので、ぎろぎろ燐《りん》を燃したやうに青く光りました。そこでたうとう二疋とも一ぺんに噴き出して一緒に、
「お前の眼は大きいねえ。」と云ひました。
その声は幸《さいはひ》に少しつんぼの梟《ふくろふ》の坊さんには聞えませんでしたが、ほかの梟たちはみんなこっちを振り向きました。兄弟の穂吉といふ梟は、そこで大へんきまり悪く思ってもぢもぢしながら頭だけはじっと垂れてゐました。二疋はみんなのこっちを見るのを枝のかげになってかくれるやうにしながら、
「おい、もう遁《に》げて遊びに行かう。」
「どこへ。」
「実相寺の林さ。」
「行かうか。」
「うん、行かう。穂吉ちゃんも行かないか。」
「ううん。」穂吉は頭をふりました。
「我今|汝《なんぢ》に、梟鵄《けうし》
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