とびあがり小さな二疋ものぼって来て二疋とももとのところへとまって片脚で眼をこすりました。お母さんの梟がも一度|叱《しか》りました。その眼も青くぎらぎらしました。
「ほんたうにお前たちったら仕方ないねえ。みなさんの見ていらっしやる処でもうすぐきっと喧嘩《けんくわ》するんだもの。なぜ穂吉ちゃんのやうに、じっとおとなしくしてゐないんだらうねえ。」
 穂吉と呼ばれた梟は、三疋の中では一番小さいやうでしたが一番|温和《おとな》しいやうでした。じっとまっすぐを向いて、枝にとまったまゝ、はじめからおしまひまで、しんとしてゐました。
 その木の一番高い枝にとまりからだ中銀いろで大きく頬《ほほ》をふくらせ今の講義のやすみのひまを水銀のやうな月光をあびてゆらりゆらりとゐねむりしてゐるのはたしかに梟《ふくろふ》のおぢいさんでした。
 月はもう余程高くなり、星座もずゐぶんめぐりました。蝎座《さそりざ》は西へ沈むとこでしたし、天の川もすっかり斜めになりました。
 向ふの低い松の木から、さっきの年老《としよ》りの坊さんの梟が、斜に飛んでさっきの通り、説教の枝にとまりました。
 急に林のざわざわがやんで、しづかにし
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