へてゐます。
「爾《そ》の時に疾翔大力《しっしょうたいりき》、爾迦夷《るかゐ》に告げて曰《いは》く、諦《あきらか》に聴け、諦に聴け、善《よ》く之《これ》を思念せよ、我今|汝《なんぢ》に、梟鵄《けうし》諸《もろもろ》の悪禽《あくきん》、離苦《りく》解脱《げだつ》の道を述べん、と。
 爾迦夷《るかゐ》、則《すなは》ち、両翼を開張し、虔《うやうや》しく頸《くび》を垂れて、座を離れ、低く飛揚して、疾翔大力を讃嘆すること三匝《さんさふ》にして、徐《おもむろ》に座に復し、拝跪《はいき》して唯《ただ》願ふらく、疾翔大力、疾翔大力、たゞ我等が為《ため》に、これを説きたまへ。たゞ我等が為《ため》に、之を説き給へと。
 疾翔大力、微笑して、金色《こんじき》の円光を以《もっ》て頭《かうべ》に被《かぶ》れるに、その光、遍《あまね》く一座を照し、諸鳥歓喜充満せり。則ち説いて曰《いは》く、
 汝等《なんぢら》審《つまびらか》に諸の悪業《あくごふ》を作る。或《あるい》は夜陰を以て、小禽《せうきん》の家に至る。時に小禽、既《すで》に終日日光に浴し、歌唄《かばい》跳躍して疲労をなし、唯唯甘美の睡眠中にあり。汝等飛躍して
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