か承知しないんです。」
大学士は葉巻を横にくわえ
雲母紙《うんもし》を張った天井《てんじょう》を
斜《なな》めに見ながらこう云《い》った。
「うん探して来たよ、僕《ぼく》は一ぺん山へ出かけるともうどんなもんでも見附《みつ》からんと云うことは断じてない、けだしすべての宝石はみな僕をしたってあつまって来るんだね。いやそれだから、此度《こんど》なんかもまったくひどく困ったよ。殊《こと》に君注文が割合に柔《やわ》らかな蛋白石《たんぱくせき》だろう。僕がその山へ入ったら蛋白石どもがみんなざらざら飛びついて来てもうどうしてもはなれないじゃないか。それが君みんな貴蛋白石《プレシアスオーパル》の火の燃えるようなやつなんだ。望みのとおりみんな背嚢《はいのう》の中に納めてやりたいことはもちろんだったが、それでは僕も身動きもできなくなるのだから気の毒だったがその中からごくいいやつだけ撰《えら》んださ。」
「ははあ、そいつはどうも、大へん結構でございました。しかし、そのお持ち帰りになりました分はいずれでございますか。一寸《ちょっと》拝見をねがいとう存じます。」
「ああ、見せるよ。ただ僕はあんな立派なやつだから
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