ばだったよ。」
楢ノ木学士は手を叩《たた》く。
「ははあ、わかった。ホンブレンさまと、一人はホ※[#小書き片仮名ル、1−6−92]ンブレンドだ。すると相手は誰だろう。わからんなあ。けれども、ふふん、こいつは面白《おもしろ》い。いよいよ今日も問答がはじまった。しめ、しめ、これだから野宿はやめられん。」
大学士は煙草《たばこ》を新らしく
一本出してマッチをする
声はいよいよ高くなる。
もっともいくら高くても
せいぜい蚊《か》の軍歌ぐらいだ。
「それはたしかにその通りさ、けれどもそれに対してお前は何と答えたね。いいえ、そいつは困ります、どうかほかのお方とご相談下さいと斯《こ》んなに立派にはねつけたろう。」
「おや、とにかくさ。それでもお前はかまわず僕の足さきにとりついたんだよ。まあ、そんなこと出来たもんだろうかね。もっとも誰かさんはできたようさ。」
「あてこするない。とりついたんじゃないよ。お前の足が僕の体骼の頭のとこにあったんだよ。僕はお前よりももっと前に生れたジッコさんを頼《たの》んだんだよ。今だって僕はジッコさんは大事に大事にしてあげてるんだ。」
大学士はよろこんで笑い出す。
「はっは
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