んだ。
「ははあ、こいつらはラクシャンの四人兄弟だな。よくわかった。ラクシャンの四人兄弟だ。よしよし。」
注文通り岩頸は
丁度胸までせり出して
ならんで空に高くそびえた。
一番右は
たしかラクシャン第一子
まっ黒な髪をふり乱し
大きな眼をぎろぎろ空に向け
しきりに口をぱくぱくして
何かどなってゐる様だが
その声は少しも聞えなかった。
右から二番目は
たしかにラクシャンの第二子だ。
長いあごを両手に載せて睡《ねむ》ってゐる。
次はラクシャン第三子
やさしい眼をせはしくまたたき
いちばん左は
ラクシャンの第|四子《しし》、末っ子だ。
夢のやうな黒い瞳《ひとみ》をあげて
じっと東の高原を見た。
楢《なら》ノ木大学士がもっとよく
四人を見ようと起き上ったら
俄《には》かにラクシャン第一子が
雷のやうに怒鳴り出した。
「何をぐづぐづしてるんだ。潰《つぶ》してしまへ。灼《や》いてしまへ。こなごなに砕いてしまへ。早くやれっ。」
楢ノ木大学士はびっくりして
大急ぎで又横になり
いびきまでして寝たふりをし
そっと横目で見つゞけた。
ところが今のどなり声は
大学士に云ったのでもなかったやうだ。
なぜならラ
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