大さわぎです。
「そいつはもうたしかなんだよ。僕《ぼく》の証拠《しょうこ》というのはね、ゆうべお月さまの出るころ、署長さんが黒い衣だけ着て、頭巾《ずきん》をかぶってね、変な人と話してたんだよ。ね、そら、あの鉄砲《てっぽう》打《う》ちの小さな変な人ね、そしてね、『おい、こんどはも少しよく、粉にして来なくちゃいかんぞ。』なんて云ってるだろう。それから鉄砲打ちが何か云ったら、『なんだ、柏《かしわ》の木の皮もまぜておいた癖《くせ》に、一俵二|両《テール》だなんて、あんまり無法なことを云うな。』なんて云ってるだろう。きっと山椒の皮の粉のことだよ。」
するとも一人が叫《さけ》びました。
「あっ、そうだ。あのね、署長さんがね、僕のうちから、灰を二俵買ったよ。僕、持って行ったんだ。ね、そら、山椒の粉へまぜるのだろう。」
「そうだ。そうだ。きっとそうだ。」みんなは手を叩《たた》いたり、こぶしを握《にぎ》ったりしました。
床屋《とこや》のリチキは、商売がはやらないで、ひまなもんですから、あとでこの話をきいて、すぐ勘定《かんじょう》しました。
毒もみ収支計算
費用の部
一、金 二両 山椒皮 一
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