にゃむにゃ。」
 兎はすっかりなくなってしまひました。
 そして狸のおなかの中で云ひました。
「すっかりだまされた。お前の腹の中はまっくろだ。あゝくやしい。」
 狸は怒って云ひました。
「やかましい。はやく溶けてしまへ。」
 兎はまた叫びました。
「みんな狸にだまされるなよ。」
 狸は眼をぎろぎろして外へ聞えないやうにしばらくの間口をしっかり閉ぢてそれから手で鼻をふさいでゐました。
 それから丁度二ヶ月たちました。ある日、狸は自分の家《うち》で、例のとほりありがたいごきたうをしてゐますと、狼《おほかみ》が籾《もみ》を三升さげて来て、どうかお説教をねがひますと云ひました。
 そこで狸は云ひました。
「お前はものの命をとったことは、五百や千では利くまいな。生きとし生けるものならばなにとて死にたいものがあらう。な。それをおまへは食ったのぢゃ。な。早くざんげさっしゃれ。でないとあとでえらい責苦にあふことぢゃぞよ。おゝ恐ろしや。なまねこ。なまねこ。」
 狼はすっかりおびえあがって、しばらくきょろきょろしながらたづねました。
「そんならどうしたらいゝでせう。」
 狸が云ひました。
「わしは山ねこさ
前へ 次へ
全21ページ中18ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング