洞熊学校を卒業した三人
宮沢賢治

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)蜘蛛《くも》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)二百|疋《ぴき》
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          ※

 赤い手の長い蜘蛛《くも》と、銀いろのなめくぢと、顔を洗ったことのない狸《たぬき》が、いっしょに洞熊《ほらくま》学校にはひりました。洞熊先生の教へることは三つでした。
 一年生のときは、うさぎと亀《かめ》のかけくらのことで、も一つは大きいものがいちばん立派だといふことでした。それから三人はみんな一番にならうと一生けん命競争しました。一年生のときは、なめくぢと狸がしじゅう遅刻して罰を食ったために蜘蛛が一番になった。なめくぢと狸とは泣いて口惜《くや》しがった。二年生のときは、洞熊先生が点数の勘定を間違ったために、なめくぢが一番になり蜘蛛と狸とは歯ぎしりしてくやしがった。三年生の試験のときは、あんまりあたりが明るいために洞熊先生が涙をこぼして眼《め》をつぶってばかりゐたものですから、狸は本を見て書きました。そして狸が一番になりました。そこで赤い手長の蜘蛛と、銀いろのなめくぢと、そ
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