るか。」
「仕方ない、とらう。たしかによつぽどえらいひとなんだ。奥に来てゐるのは」
二人は帽子とオーバコートを釘《くぎ》にかけ、靴をぬいでぺたぺたあるいて扉の中にはひりました。
扉の裏側には、
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「ネクタイピン、カフスボタン、眼鏡《めがね》、財布、その他金物類、
ことに尖《とが》つたものは、みんなこゝに置いてください」
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と書いてありました。扉のすぐ横には黒塗りの立派な金庫も、ちやんと口を開けて置いてありました。鍵《かぎ》まで添へてあつたのです。
「はゝあ、何かの料理に電気をつかふと見えるね。金気《かなけ》のものはあぶない。ことに尖《とが》つたものはあぶないと斯《か》う云ふんだらう。」
「さうだらう。して見ると勘定は帰りにこゝで払ふのだらうか。」
「どうもさうらしい。」
「さうだ。きつと。」
二人はめがねをはづしたり、カフスボタンをとつたり、みんな金庫の中に入れて、ぱちんと錠をかけました。
すこし行きますとまた扉《と》があつて、その前に硝子《がらす》の壺《つぼ》が一つありました。扉には斯《か》う書いてありました。
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