の立派な海蛇が出て参りました。そして双子のお星さまだちは海蛇の王さまの前に導かれました。王様は白い長い髯《ひげ》の生えた老人でにこにこわらって云いました。
「あなた方はチュンセ童子にポウセ童子。よく存じて居ります。あなた方が前にあの空の蠍《さそり》の悪い心を命がけでお直しになった話はここへも伝わって居ります。私はそれをこちらの小学校の読本《とくほん》にも入れさせました。さて今度はとんだ災難で定めしびっくりなさったでしょう。」
チュンセ童子が申しました。
「これはお語《ことば》誠《まこと》に恐《おそ》れ入ります。私共はもう天上にも帰れませんしできます事ならこちらで何なりみなさまのお役に立ちたいと存じます。」
王が云いました。
「いやいや、そのご謙遜《けんそん》は恐れ入ります。早速|竜巻《たつまき》に云いつけて天上にお送りいたしましょう。お帰りになりましたらあなたの王様に海蛇めが宜《よろ》しく申し上げたと仰《お》っしゃって下さい。」
ポウセ童子が悦《よろこ》んで申しました。
「それでは王様は私共の王様をご存じでいらっしゃいますか。」
王はあわてて椅子《いす》を下って申しました。
「いいえ、それどころではございません。王様はこの私の唯《ただ》一人の王でございます。遠いむかしから私めの先生でございます。私はあのお方の愚《おろ》かなしもべでございます。いや、まだおわかりになりますまい。けれどもやがておわかりでございましょう。それでは夜の明けないうちに竜巻にお伴《とも》致《いた》させます。これ、これ。支度《したく》はいいか。」
一|疋《ぴき》のけらいの海蛇が
「はい、ご門の前にお待ちいたして居ります。」と答えました。
二人は丁寧《ていねい》に王にお辞儀をいたしました。
「それでは王様、ごきげんよろしゅう。いずれ改めて空からお礼を申しあげます。このお宮のいつまでも栄えますよう。」
王は立って云いました。
「あなた方もどうかますます立派にお光り下さいますよう。それではごきげんよろしゅう。」
けらいたちが一度に恭々しくお辞儀をしました。
童子たちは門の外に出ました。
竜巻が銀のとぐろを巻いてねています。
一人の海蛇が二人をその頭に載《の》せました。
二人はその角《つの》に取りつきました。
その時赤い光のひとでが沢山出て来て叫《さけ》びました。
「さよなら、ど
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