りません。それは掛けようが悪いのです。」
農民一「掛げよう悪たてお前さんの言うようにすたます。」
爾薩待「いや、そうでないです。第一、日中に掛けるということがありますか。」
農民一「はでな、そいづお前さん言わなぃんだもな。」
爾薩待「言わないたって知れてるじゃありませんか。いやになっちまうな。」
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「申し。」(農民二 登場)
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農民二「陸稲《おかぼ》さっぱり枯れでしまったます。」
爾薩待「だからね、今も言ってるんだ、こんな天気のまっ盛りに肥料にしろ薬剤にしろかけるという筈はないんだ。」
農民二「何したどす。お前さん、今行ってすぐ掛げろって言ったけぁか。」
爾薩待「それは言った。言ったけれども、君たちのやったようでなく、噴霧器《ふんむき》を使わないといけないんだ。」
農民一「虫も死ぬ位だから陸稲さも悪いのでぁあるまぃが。」
農民二「どうもそうだようだます。」
爾薩待「いや、そんなことはない。ちゃんと処方《しょほう》通りやればうまく行ったんだ。」
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「今日は。」(農民三 登場)
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