林の中には月の光が青い棒を何本も斜《なな》めに投げ込《こ》んだように射《さ》して居りました。その中のあき地に二人は来ました。
 見るともう狐の学校生徒が沢山《たくさん》集って栗《くり》の皮をぶっつけ合ったりすもうをとったり殊《こと》におかしいのは小さな小さな鼠《ねずみ》位の狐の子が大きな子供の狐の肩車に乗ってお星様を取ろうとしているのです。
 みんなの前の木の枝《えだ》に白い一枚の敷布《しきふ》がさがっていました。
 不意にうしろで
「今晩は、よくおいででした。先日は失礼いたしました。」という声がしますので四郎とかん子とはびっくりして振《ふ》り向いて見ると紺三郎です。
 紺三郎なんかまるで立派な燕尾服《えんびふく》を着て水仙《すいせん》の花を胸につけてまっ白なはんけちでしきりにその尖《とが》ったお口を拭《ふ》いているのです。
 四郎は一寸《ちょっと》お辞儀《じぎ》をして云いました。
「この間は失敬。それから今晩はありがとう。このお餅をみなさんであがって下さい。」
 狐の学校生徒はみんなこっちを見ています。
 紺三郎は胸を一杯《いっぱい》に張ってすまして餅を受けとりました。
「これはどう
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