んからもうお帰りなさい。今度月夜に雪が凍ったらきっとおいで下さい。さっきの幻燈をやりますから。」
そこで四郎とかん子とは
「堅雪かんこ、凍み雪しんこ。」と歌いながら銀の雪を渡っておうちへ帰りました。
「堅雪かんこ、凍み雪しんこ。」
雪渡《ゆきわた》り その二(狐小学校の幻燈会)
青白い大きな十五夜のお月様がしずかに氷《ひ》の上山《かみやま》から登りました。
雪はチカチカ青く光り、そして今日も寒水石《かんすいせき》のように堅《かた》く凍《こお》りました。
四郎は狐の紺三郎との約束《やくそく》を思い出して妹のかん子にそっと云いました。
「今夜狐の幻燈会なんだね。行こうか。」
するとかん子は、
「行きましょう。行きましょう。狐こんこん狐の子、こんこん狐の紺三郎。」とはねあがって高く叫《さけ》んでしまいました。
すると二番目の兄さんの二郎が
「お前たちは狐のとこへ遊びに行くのかい。僕《ぼく》も行きたいな。」と云いました。
四郎は困ってしまって肩《かた》をすくめて云《い》いました。
「大兄《おおにい》さん。だって、狐の幻燈会は十一歳までですよ、入場券に書いてあるんだもの。
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