とかん子に云いました。
「僕の作った歌だねい。」
 絵が消えて『火を軽べつすべからず』という字があらわれました。それも消えて絵がうつりました。狐のこん助が焼いたお魚を取ろうとしてしっぽに火がついた所です。
 狐の生徒がみな叫びました。
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「狐こんこん狐の子。去年狐のこん助が
 焼いた魚を取ろとしておしりに火がつき
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きゃんきゃんきゃん。」
[#ここで字下げ終わり]
 笛がピーと鳴り幕は明るくなって紺三郎が又出て来て云いました。
「みなさん。今晩の幻燈はこれでおしまいです。今夜みなさんは深く心に留《と》めなければならないことがあります。それは狐のこしらえたものを賢《かしこ》いすこしも酔わない人間のお子さんが喰べて下すったという事です。そこでみなさんはこれからも、大人になってもうそをつかず人をそねまず私共狐の今迄《いままで》の悪い評判をすっかり無くしてしまうだろうと思います。閉会の辞です。」
 狐の生徒はみんな感動して両手をあげたりワーッと立ちあがりました。そしてキラキラ涙をこぼしたのです。
 紺三郎が二人の前に来て、丁寧におじぎをして云いまし
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