まふだらうと思ひます。閉会の辞です。」
 狐の生徒はみんな感動して両手をあげたりワーッと立ちあがりました。そしてキラキラ涙をこぼしたのです。
 紺三郎が二人の前に来て、丁寧におじぎをして云ひました。
「それでは。さやうなら。今夜のご恩は決して忘れません。」
 二人もおじぎをしてうちの方へ帰りました。狐の生徒たちが追ひかけて来て二人のふところやかくしにどんぐりだの栗だの青びかりの石だのを入れて、
「そら、あげますよ。」「そら、取って下さい。」なんて云って風の様に逃げ帰って行きます。
 紺三郎は笑って見てゐました。
 二人は森を出て野原を行きました。
 その青白い雪の野原のまん中で三人の黒い影が向ふから来るのを見ました。それは迎ひに来た兄さん達でした。



底本:「宮沢賢治全集8」ちくま文庫、筑摩書房
   1986(昭和61)年1月28日第1刷発行
   2004(平成16)年4月25日第20刷発行
初出:「愛国婦人」
   1921(大正10)年12月号、1922(大正11)年1月号
入力:土屋隆
校正:鈴木厚司
2009年1月14日作成
青空文庫作成ファイル:
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