のやうに赤くなってるねえ
水がごろごろ鳴ってゐる
さあ犬が吠えだしたぞ
さう云っちゃ失敬だが
まづ犬の中のカルゾーだな
喇叭のやうないゝ声だ
ひばがきのなかの
あっちのうちからもこっちのうちからも
こどもらが叫びだしたのは
けしかけてゐるつもりだらうか
それともおれたちを気の毒がって
とめようとしてゐるのだらうか
ははあきみは日本犬ですね
生藁の上にねそべってゐる
顔には茶いろな縞もある
どうしてぼくはこの犬を
こんなにばかにするのだらう
やっぱりしゃうが合はないのだな
どうだ雲が地平線にすれすれで
そこに一すぢ白金環さへつくってゐる
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一八 人首町
[#地付き]一九二四、三、二五、
雪や雑木にあさひがふり
丘のはざまのいっぽん町は
あさましいまで光ってゐる
そのうしろにはのっそり白い五輪峠
五輪峠のいたゞきで
鉛の雲が湧きまた翔け
南につゞく種山ヶ原のなだらは
渦巻くひかりの霧でいっぱい
つめたい風の合間から
ひばりの声も聞えてくるし
やどり木のまりには艸いろのもあって
その梢から落ちるやうに飛ぶ鳥もある
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