教室から帰ったときは
そこは賑やかな空気の祭
青くかゞやく天の椀から
ねむや鵝鳥の花も胸毛も降ってゐました
それからあなたが進度表などお綴ぢになり
わたくしが火をたきつけてゐたそのひまに
あの妖質のみづうみが
ぎらぎらひかってよどんだのです
えゝ さうなんです
もしわたくしがあなたの方の管長ならば
こんなときこそ布教使がたを
みんな巨きな駱駝に乗せて
あのほのじろくあえかな霧のイリデ※[#小書き片仮名ス、1−6−80]センス
蛋白石のけむりのなかに
もうどこまでもだしてやります
そんな砂漠の漂ふ大きな虚像のなかを
あるいはひとり
あるいは兵士や隊商連のなかまに入れて
熱く息づくらくだのせなの革嚢に
世界の辛苦を一杯につめ
極地の海に堅く封じて沈めることを命じます
そしたらたぶん それは強力な竜にかはって
地球一めんはげしい雹を降らすでせう
そのときわたくし管長は
東京の中本山の玻璃台にろ頂部だけをてかてか剃って
九条のけさをかけて立ち
二人の侍者に香炉と白い百合の花とをさゝげさせ
空を仰いでごくおもむろに
竜をなだめる二行の迦陀をつくります
いやごらんなさい
たうとう新聞記者がやってき
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