はおまへの行く方角で
あらたな仕事を見つけるのだ)
風がまた来れば
一瞬白い水あかり
(待ておまへはアルモン黒《ブラック》だな)
乱れた鉛の雲の間に
ひどく傷んで月の死骸があらはれる
それはあるいは風に膨れた大きな白い星だらう
烏が軋り
雨はじめじめ落ちてくる
[#改ページ]
三一一 昏い秋
[#地付き]一九二四、一〇、四、
黒塚森の一群が
風の向ふにけむりを吐けば
そんなつめたい白い火むらは
北いっぱいに飛んでゐる
……野はらのひわれも火を噴きさう……
雲の鎖やむら立ちや
白いうつぼの稲田にたって
ひとは幽霊写真のやうに
ぼんやりとして風を見送る
[#改ページ]
三一三 産業組合青年会
[#地付き]一九二四、一〇、五、
祀られざるも神には神の身土があると
あざけるやうなうつろな声で
さう云ったのはいったい誰だ 席をわたったそれは誰だ
……雪をはらんだつめたい雨が
闇をぴしぴし縫ってゐる……
まことの道は
誰が云ったの行ったの
さういふ風のものでない
祭祀の有無を是非するならば
卑賤の神のその名にさへもふさはぬと
応へたものは
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