のところに戻るやぴたりととまってうたいました。
「お日さんを
せながさしょえば はんの木《ぎ》も
くだげで光る
鉄のかんがみ。」
はあと嘉十もこっちでその立派な太陽とはんのきを拝みました。右から三ばん目の鹿は首をせわしくあげたり下げたりしてうたいました。
「お日さんは
はんの木《ぎ》の向《もご》さ、降りでても
すすぎ、ぎんがぎが
まぶしまんぶし。」
ほんとうにすすきはみんな、まっ白な火のように燃えたのです。
「ぎんがぎがの
すすぎの中《なが》さ立ぢあがる
はんの木《ぎ》のすねの
長《な》んがい、かげぼうし。」
五番目の鹿がひくく首を垂れて、もうつぶやくようにうたいだしていました。
「ぎんがぎがの
すすぎの底《そご》の日暮《ひぐ》れかだ
苔《こげ》の野はらを
蟻《あり》こも行がず。」
このとき鹿はみな首を垂れていましたが、六番目がにわかに首をりんとあげてうたいました。
「ぎんがぎがの
すすぎの底《そご》でそっこりと
咲ぐうめばぢの
愛《え》どしおえどし。」
鹿はそれからみんな、みじかく笛のように鳴いてはねあが
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