は   結構《けっこう》だが
 となりにいからだ ふんながす
 青じろ番兵《ばんぺ》は   気にかがる。
  青じろ番兵《ばんぺ》は   ふんにゃふにゃ
 吠《ほ》えるもさないば 泣ぐもさない
 瘠《や》せで長くて   ぶぢぶぢで
 どごが口《くぢ》だが   あだまだが
 ひでりあがりの  なめぐじら。」
 走りながら廻りながら踊《おど》りながら、鹿《しか》はたびたび風のように進んで、手拭を角でついたり足でふんだりしました。嘉十《かじゅう》の手拭はかあいそうに泥がついてところどころ穴さえあきました。
 そこで鹿のめぐりはだんだんゆるやかになりました。
「おう、こんだ団子お食《く》ばがりだじょ。」
「おう、煮《に》だ団子だじょ。」
「おう、まん円《まる》けじょ。」
「おう、はんぐはぐ。」
「おう、すっこんすっこ。」
「おう、けっこ。」
 鹿はそれからみんなばらばらになって、四方から栃のだんごを囲んで集まりました。
 そしていちばんはじめに手拭に進んだ鹿から、一口ずつ団子をたべました。六|疋《ぴき》めの鹿は、やっと豆粒《まめつぶ》のくらいをたべただけです。
 鹿はそれからまた環《わ》になっ
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