く又ついて行きました。
「どうしておまへの足はさうがたがた鳴るんだい。第一やかましいや。僕のやうにそっとあるけないのかい。」
狐が又次の室をあけようとしてふり向いて云ひました。
仔牛はどうもうまく行かないといふやうに頭をふりながらまたどこか、なあに僕は人の家の中なんぞ入りたくないんだ、と思ひました。
「何だい、この室《へや》はきものばかりだい。見っともないや。」
赤狐《あかぎつね》は扉《と》をしめて云ひました。僕はあのいつか公爵の子供が着て居た赤い上着なら見たいなあと仔牛は思ひましたけれどももう狐がぐんぐん向ふへ行くもんですから仕方なくついて行きました。
狐はだまって今度は真鍮《しんちゅう》のてすりのついた立派なはしごをのぼりはじめました。どうして狐さんはあゝうまくのぼるんだらうと仔牛は思ひました。
「やかましいねえ、お前の足ったら、何て無器用なんだらう。」狐はこはい眼《め》をして指で仔牛をおどしました。
はしご段をのぼりましたら一つの室があけはなしてありました。日が一ぱいに射《さ》して絨緞《じゅうたん》の花のもやうが燃えるやうに見えました。てかてかした円卓《まるテーブル》の
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