、うつくしい燐光を出す、いちめんのかはらははこぐさの上に立つて、まじめな顏をして兩手をひろげて、ぢつとそらを見てゐたのです。
「あすこへ行つてる。ずゐぶん奇體だねえ。きつとまた鳥をつかまへるとこだねえ。汽車が走つて行かないうちに、早く鳥がおりるといいな。」と云つた途端、がらんとした桔梗いろの空から、さつき見たやうな鷺が、まるで雪の降るやうにぎやあぎやあ叫びながら、いつぱいに舞ひおりて來ました。するとあの鳥捕りは、すつかり註文通りだといふやうにほくほくして、兩足をかつきり六十度に開いて立つて、鷺のちぢめて降りて來る黒い脚を兩手で片つ端から押へて、布の袋の中に入れるのでした。すると鷺は螢のやうに、袋の中でしばらく、青くぺかぺか光つたり消えたりしてゐましたが、おしまひにはとうとう、みんなぼんやり白くなつて、眼をつぶるのでした。ところが、つかまへられる鳥よりは、つかまへられないで無事に天の川の砂の上に降りるものの方が多かつたのです。それは見てゐると、足が砂へつくや否や、まるで雪の融けるやうに、縮まつて扁べつたくなつて、間もなく熔鑛爐から出た銅の汁のやうに、砂や砂利の上にひろがり、しばらくは鳥の
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