るのでした。そして間もなく、あの汽車から見えたきれいな河原に來ました。
カムパネルラは、そのきれいな砂を一つまみ、掌にひろげ、指できしきしさせながら、夢のやうに云つてゐるのでした。
「この砂はみんな水晶だ。中で小さな火が燃えてゐる。」
「さうだ。」どこでぼくは、そんなこと習つたらうと思ひながら、ジヨバンニもぼんやり答へてゐました。
河原の礫は、みんなすきとほつて、たしかに水晶や黄玉や、またくしやくしやの皺曲をあらはしたのや、また稜から霧のやうな青白い光を出す鋼玉やらでした。ジヨバンニは、走つてその渚に行つて、水に手をひたしました。けれどもあやしいその銀河の水は、水素よりももつとすきとほつてゐたのです。それでもたしかに流れてゐたことは、二人の手首の、水にひたしたところが、少し水銀いろに浮いたやうに見え、その手首にぶつつかつてできた波は、うつくしい燐光をあげて、ちらちらと燃えるやうに見えたのでもわかりました。
川上の方を見ると、すすきのいつぱいに生えている崖の下に、白い岩が、まるで運動場のやうに平らに川に沿つて出てゐるのでした。そこに小さな五六人の人かげが、何か掘り出すか埋めるかして
前へ
次へ
全90ページ中35ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング