のはづれにしかゐないといふやうな氣がしてしかたなかつたのです。
けれどもみんなはまだどこかの波の間から、
「ぼくずゐぶん泳いだぞ。」と云ひながらカムパネルラが出て來るか、或ひはカムパネルラがどこかの人の知らない洲にでも着いて立つてゐて、誰かの來るのを待つてゐるかといふやうな氣がして仕方ないらしいのでした。
けれども俄かにカムパネルラのお父さんがきつぱり云ひました。
「もう駄目です。墜ちてから四十五分たちましたから。」
ジヨバンニは思はずかけよつて、博士の前に立つて、ぼくはカムパネルラの行つた方を知つてゐます。ぼくはカムパネルラといつしよに歩いてゐたのです。と云はうとしましたが、もうのどがつまつて何とも云へませんでした。
すると博士はジヨバンニが挨拶に來たとでも思つたものですか、しばらくしげしげとジヨバンニを見てゐましたが、
「あなたはジヨバンニさんでしたね。どうも今晩はありがたう。」と叮ねいに云ひました。
ジヨバンニは何も云へずにただおじぎをしました。
「あなたのお父さんはもう歸つてゐますか。」博士は堅く時計を握つたまま、また聞きました。
「いいえ。」ジヨバンニはかすかに頭を
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