か」
「ええ、毎日|注文《ちゅうもん》があります。しかし雁《がん》の方が、もっと売れます。雁《がん》の方がずっと柄《がら》がいいし、第一《だいいち》手数《てすう》がありませんからな。そら」鳥捕《とりと》りは、また別《べつ》の方の包《つつ》みを解《と》きました。すると黄と青じろとまだらになって、なにかのあかりのようにひかる雁《がん》が、ちょうどさっきの鷺《さぎ》のように、くちばしをそろえて、少しひらべったくなって、ならんでいました。
「こっちはすぐたべられます。どうです、少しおあがりなさい」鳥捕《とりと》りは、黄いろの雁《がん》の足を、軽《かる》くひっぱりました。するとそれは、チョコレートででもできているように、すっときれいにはなれました。
「どうです。すこしたべてごらんなさい」鳥捕《とりと》りは、それを二つにちぎってわたしました。ジョバンニは、ちょっとたべてみて、
(なんだ、やっぱりこいつはお菓子《かし》だ。チョコレートよりも、もっとおいしいけれども、こんな雁《がん》が飛《と》んでいるもんか。この男は、どこかそこらの野原の菓子屋《かしや》だ。けれどもぼくは、このひとをばかにしながら、こ
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