疑獄元兇
宮沢賢治
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)告《ごう》に
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)対|告《ごう》に
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#感嘆符二つ、1−8−75]
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とにかく向ふは検事の立場、
今の会釈は悪くない。勲績のある上長として、盛名のある君子として、礼を尽した態度であった。
わたしの方も声音から、動作一般自然であった。或ひはかういふ調子でもって、政治の実といふものを、容易に了解するかも知れん。それならわたしは、畢竟党から撰ばれて、若手検事の腕利きといふ この青年を対|告《ごう》に、社会一般教育のため、こゝへ来たとも云ひ得やう。
いかなる明文制裁と雖ど、それが布かるゝ社会に於て、遵守し得ざるに至ったときは、その法既に悪法である、それが判らん筈もない。だが何のため、向ふは壇をのぼるのだ。整然として椅子を引いて、眼平らにこっちを見る。
卓に両手を副へてゐる。正に上司の儀容であるが、勿論職権止むを得まい。
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