舟は岸に着きました。
二人の中の一人が飛んで来ました。
「お待ぢ申して居りあ※[#小書き平仮名ん、230−9]した。お荷物は。」
それは平太の家の下男でした。平太はだまって眼をパチパチさせながらトランクを渡しました。下男はまるでひどく気が立ってその大きな革トランクをしょひました。
それから二人はうちの方へ蚊のくんくん鳴く桑畑の中を歩きました。
二人が大きな路《みち》に出て少し行ったとき、村長さんも丁度役場から帰った処でうしろの方から来ましたがその大トランクを見てにが笑ひをしました。
底本:「新修宮沢賢治全集 第九巻」筑摩書房
1979(昭和54)年7月15日初版第1刷
1983(昭和58)年12月20日初版第6刷
※底本は旧仮名ですが、拗促音は小書きされています。これにならい、ルビの拗促音も、小書きにしました。
入力:林 幸雄
校正:土屋隆
2008年2月27日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さん
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