き》をかけてみがきました。
 実《じつ》にみんな、だまってため息《いき》ばかりつきながら、かわるがわる一生けん命《めい》みがいたのです。
 もう夕方《ゆうがた》になりました。お父さんは、にわかに気がついたように立ちあがって、
 「まあご飯《はん》を食べよう。今夜|一晩《ひとばん》油《あぶら》に漬《つ》けておいてみろ。それがいちばんいいという話だ」といいました。お母さんはびっくりして、
 「まあ、ご飯《はん》のしたくを忘《わす》れていた。なんにもこさえてない。一昨日《おととい》のすずらんの実《み》と今朝《けさ》の角《かく》パンだけをたべましょうか」と言《い》いました。
 「うんそれでいいさ」とお父さんがいいました。ホモイはため息《いき》をついて玉を函《はこ》に入れてじっとそれを見つめました。
 みんなは、だまってご飯《はん》をすましました。
 お父さんは、
 「どれ油《あぶら》を出してやるかな」と言《い》いながら棚《たな》からかやの実《み》の油《あぶら》の瓶《びん》をおろしました。
 ホモイはそれを受《う》けとって貝《かい》の火を入れた函《はこ》に注《つ》ぎました。そしてあかりをけしてみ
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