生には、しっかりした所がありますよ。五時間目だって、一人も厭《あ》きてるものがないんです。参観のもようを、詳《くわ》しくお話しましょうか。きっとあなたにも、大へん参考になります。
浜茄は見附からず、小さな火山弾を一つ採って、私は草に座《すわ》りました。空がきらきらの白いうろこ雲で一杯でした。茨には青い実がたくさんつき、萱《かや》はもうそろそろ穂《ほ》を出しかけていました。太陽が丁度空の高い処《ところ》にかかっていましたから、もうおひるだということがわかりました。又じっさいお腹《なか》も空《す》いていました。そこで私は持って行ったパンの袋《ふくろ》を背嚢《はいのう》から出して、すぐ喰《た》べようとしましたが、急に水がほしくなりました。今まで歩いたところには、一とこだって流れも泉もありませんでしたが、もしかも少し向うへ行ったら、とにかく小さな流れにでもぶっつかるかも知れないと考えて、私は背嚢の中に火山弾を入れて、面倒《めんどう》くさいのでかけ金もかけず、締革《しめかわ》をぶらさげたまませなかにしょい、パンの袋だけ手にもって、又ぶらぶらと向うへ歩いて行きました。
何べんもばらがかきねのよ
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