茨海小学校
宮沢賢治
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)茨海《ばらうみ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)茨海|狐《きつね》小学校
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私が茨海《ばらうみ》の野原に行ったのは、火山弾《かざんだん》の手頃《てごろ》な標本を採るためと、それから、あそこに野生の浜茄《はまなす》が生えているという噂《うわさ》を、確めるためとでした。浜茄はご承知のとおり、海岸に生える植物です。それが、あんな、海から三十里もある山脈を隔《へだ》てた野原などに生えるのは、おかしいとみんな云《い》うのです。ある人は、新聞に三つの理由をあげて、あの茨海の野原は、すぐ先頃《せんころ》まで海だったということを論じました。それは第一に、その茨海という名前、第二に浜茄の生えていること、第三にあすこの土を嘗《な》めてみると、たしかに少し鹹《しおから》いような気がすること、とこう云うのですけれども、私はそんなことはどれも証拠《しょうこ》にならないと思います。
ところが私は、浜茄をとうとう見附《みつ》けませんでした。尤《もっと》も私が見附けなかったからと云って、浜茄があすこに
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