い。」とネネムは赤い髪を掻《か》きながら云いました。
 すると家の中からペタペタペタペタ沢山の沢山のばけものどもが出て参りました。
 みんなまっ黒な長い服を着て、恭々《うやうや》しく礼をいたしました。
「私は大学校のフゥフィーボー先生のご紹介《しょうかい》で参りましたが世界裁判長に一寸お目にかかれましょうか。」
 するとみんなは口をそろえて云いました。
「それはあなたでございます。あなたがその裁判長でございます。」
「なるほど、そうですか。するとあなた方は何ですか。」
「私どもはあなたの部下です。判事や検事やなんかです。」
「そうですか。それでは私はここの主人ですね。」
「さようでございます。」
 こんなような訳でペンネンネンネンネン・ネネムは一ぺんに世界裁判長になって、みんなに囲まれて裁判長室の海綿でこしらえた椅子《いす》にどっかりと座りました。
 すると一人の判事が恭々しく申しました。
「今晩開廷の運びになっている件が二つございますが、いかがでございましょうお疲《つか》れでいらっしゃいましょうか。」
「いいや、よろしい。やります。しかし裁判の方針はどうですか。」
「はい。裁判の方針
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