にして笑いました。みんなも笑いました。とにかくみんな寝巻《ねまき》をぬいで、下に降りて、口を漱《すす》いだり顔を洗ったりしました。
それから私たちは、簡単に朝飯を済まして、式が九時から始まるのでしたから、しばらくバルコンでやすんで待っていました。
不意に教会の近くから、のろしが一発|昇《のぼ》りました。そらがまっ青に晴れて、一枚の瑠璃《るり》のように見えました。その冴《す》みきったよく磨《みが》かれた青ぞらで、まっ白なけむりがパッとたち、それから黄いろな長いけむりがうねうね下って来ました。それはたしかに、日本でやる下り竜《りゅう》の仕掛《しか》け花火です。そこで私ははっと気がつきました。こののろしは陳《ちん》氏があげているのだ、陳氏が支那式黄竜の仕掛け花火をやったのだと気がつきましたので、大悦《おおよろこ》びでみんなにも説明しました。
その時又、今朝のすてきなラッパの声が遠くから響《ひび》いて参りました。
「来た来た。さあどんな顔ぶれだか、一つ見てやろうじゃないか。」地学博士を先登《せんとう》に、私たちは、どやどや、玄関へ降りて行きました。たちまち一台の大きな赤い自働車がやって来
前へ
次へ
全76ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング