《きけん》の底に於て析出《せきしゅつ》した。殊《こと》にこの大祭に於て、多少の愉快《ゆかい》なる刺戟《しげき》を吾人が所有するということは、最《もっとも》天意のある所である。多少の愉快なる刺戟とは何であるか、これプログラム中にある異教|及《および》異派の諸氏の論難である。是等《これら》諸氏はみな信者諸氏と同じく、各自の主義主張の為《ため》に、世界各地より集り来《きた》った真理の友である。恐《おそ》らく諸氏の論難は、最|痛烈《つうれつ》辛辣《しんらつ》なものであろう。その愈々《いよいよ》鋭利《えいり》なるほど、愈々公明に我等はこれに答えんと欲する。これ大祭開式の辞、最後糟粕の部分である。祭司次長ウィリアム・タッピング祭司長ヘンリー・デビスに代ってこれを述べる。」
 拍手は天幕《テント》もひるがえるばかり、この間デビスはただよろよろと感激《かんげき》して頭をふるばかりでありました。
 その拍手の中でデビス長老は祭司次長に連れられて壇を下り透明《とうめい》な電鈴が式場一杯に鳴りました。祭司次長が又祭壇に上って壇の隅《すみ》の椅子にかけ、それから一寸《ちょっと》立って異教徒席の方を軽くさし招き
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