ぱりその通り、崩《くず》れるように泣いてしまったのです。祭司次長、ウィリアム・タッピングという人で、爪哇《ジャワ》の宣教師なそうですが、せいの高い立派なじいさんでした、が見兼ねて出て行って、祭司長にならんで立ちました。式場はしいんと静まりました。
「諸君、祭司長は、只今《ただいま》既《すで》に、無言を以《もっ》て百千万言を披瀝《ひれき》した。是《こ》れ、げにも尊き祭始の宣言である。然《しか》しながら、未《いま》だ祭司長の云わざる処もある。これ実に祭司長が述べんと欲するものの中の糟粕《そうはく》である。これをしも、祭司次長が諸君に告げんと欲《ほっ》して、敢《あえ》て咎《とが》めらるべきでない。諸君、吾人《ごじん》は内外多数の迫害《はくがい》に耐《た》えて、今日|迄《まで》ビジテリアン同情派の主張を維持《いじ》して来た。然もこれ未だ社会的に無力なる、各個人個人に於《おい》てである。然るに今日は既にビジテリアン同情派の堅《かた》き結束《けっそく》を見、その光輝《こうき》ある八面体の結晶《けっしょう》とも云うべきビジテリアン大祭を、この清澄《せいちょう》なるニュウファウンドランド島、九月の気圏
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