から口の中で、
「ヘイ、それから。」と言いました。
タねずみはやっと安心してまたおひざに手を置いてすわりました。
クねずみもやっとまっすぐを向いて言いました。
「先《せん》ころの地震にはおどろきましたね。」
「全くです。」
「あんな大きいのは私もはじめてですよ。」
「ええ、ジョウカドウでしたねえ。シンゲンはなんでもトウケイ四十二度二分ナンイ……。」
「エヘン、エヘン。」
クねずみはまたどなりました。
タねずみはまた面《めん》くらいましたが、さっきほどではありませんでした。
クねずみはやっと気を直して言いました。
「天気もよくなりましたね。あなたは何かうまい仕掛けをしておきましたか。」
「いいえ、なんにもしておきません。しかし、今度天気が長くつづいたら、私は少し畑の方へ出てみようと思うんです。」
「畑には何かいいことがありますか。」
「秋ですからとにかく何かこぼれているだろうと思います。天気さえよければいいのですがね。」
「どうでしょう。天気はいいでしょうか。」
「そうですね、新聞に出ていましたが、オキナワレットウにハッセイしたテイキアツは次第にホクホクセイのほうへシンコウ……
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