るは立ちあがって、家をぐるっと一まわしまわしました。すると酒屋はたちまちカイロ団長の本宅にかわりました。つまり前には四角だったのが今度は六角形の家になったのですな。
 さて、その日は暮《く》れて、次の日になりました。お日さまの黄金色《きんいろ》の光は、うしろの桃の木の影法師《かげぼうし》を三千寸も遠くまで投げ出し、空はまっ青にひかりましたが、誰もカイロ団に仕事を頼《たの》みに来ませんでした。そこでとのさまがえるはみんなを集めて云いました。
「さっぱり誰も仕事を頼みに来んな。どうもこう仕事がなくちゃ、お前たちを養っておいても仕方ない。俺《おれ》もとうとう飛んだことになったよ。それにつけても仕事のない時に、いそがしい時の仕度《したく》をして置くことが、最必要だ。つまりその仕事の材料を、こんな時に集めて置かないといかんな。ついてはまず第一が木だがな。今日はみんな出て行って立派な木を十本だけ、十本じゃすくない、ええと、百本、百本でもすくないな、千本だけ集めて来い。もし千本集まらなかったらすぐ警察へ訴《うった》えるぞ。貴様らはみんな死刑《しけい》になるぞ。その太い首をスポンと切られるぞ。首が太い
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