けでした。とのさまがえるは、よろこんで、にこにこにこにこ笑って、棒を取り直し、片っぱしからあまがえるの緑色の頭をポンポンポンポンたたきつけました。さあ、大へん、みんな、
「あ痛っ、あ痛っ。誰だい。」なんて云いながら目をさまして、しばらくきょろきょろきょろきょろしていましたが、いよいよそれが酒屋のおやじのとのさまがえるの仕業《しわざ》だとわかると、もうみな一ぺんに、
「何だい。おやじ。よくもひとをなぐったな。」と云いながら、四方八方から、飛びかかりましたが、何分とのさまがえるは三十がえる力《りき》あるのですし、くさりかたびらは着ていますし、それにあまがえるはみんな舶来ウェスキーでひょろひょろしてますから、片っぱしからストンストンと投げつけられました。おしまいにはとのさまがえるは、十一疋のあまがえるを、もじゃもじゃ堅《かた》めて、ぺちゃんと投げつけました。あまがえるはすっかり恐《おそ》れ入って、ふるえて、すきとおる位青くなって、その辺に平伏《へいふく》いたしました。そこでとのさまがえるがおごそかに云《い》いました。
「お前たちはわしの酒を呑《の》んだ。どの勘定も八十銭より下のはない。ところ
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