キーイキーイといびきをかいて寝《ね》てしまいました。
とのさまがえるはそこでにやりと笑って、いそいですっかり店をしめて、お酒の石油缶にはきちんと蓋《ふた》をしてしまいました。それから戸棚《とだな》からくさりかたびらを出して、頭から顔から足のさきまでちゃんと着込《きこ》んでしまいました。
それからテーブルと椅子《いす》をもって来て、きちんとすわり込みました。あまがえるはみんな、キーイキーイといびきをかいています。とのさまがえるはそこで小さなこしかけを一つ持って来て、自分の椅子の向う側に置きました。
それから棚から鉄の棒をおろして来て椅子へどっかり座《すわ》って一ばんはじのあまがえるの緑色のあたまをこつんとたたきました。
「おい。起きな。勘定《かんじょう》を払《はら》うんだよ。さあ。」
「キーイ、キーイ、クヮア、あ、痛い、誰《たれ》だい。ひとの頭を撲《なぐ》るやつは。」
「勘定を払いな。」
「あっ、そうそう。勘定はいくらになっていますか。」
「お前のは三百四十二杯で、八十五銭五厘だ。どうだ。払えるか。」
あまがえるは財布《さいふ》を出して見ましたが、三銭二厘しかありません。
「何だ
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