切ってしまう位、実にわけないはなしだ。」
 あまがえるはみなすきとおってまっ青になってしまいました。それはその筈《はず》です。一人九百貫の石なんて、人間でさえ出来るもんじゃありません。ところがあまがえるの目方が何匁あるかと云ったら、たかが八匁か九匁でしょう。それが一日に一人で九百貫の石を運ぶなどはもうみんな考えただけでめまいを起してクゥウ、クゥウと鳴ってばたりばたり倒《たお》れてしまったことは全く無理もありません。
 とのさまがえるは早速例の鉄の棒を持ち出してあまがえるの頭をコツンコツンと叩《たた》いてまわりました。あまがえるはまわりが青くくるくるするように思いながら仕事に出て行きました。お日さまさえ、ずうっと遠くの天の隅《すみ》のあたりで、三角になってくるりくるりとうごいているように見えたのです。
 みんなは石のある所に来ました。そしててんでに百匁ばかりの石につなをつけて、エンヤラヤア、ホイ、エンヤラヤアホイ。とひっぱりはじめました。みんなあんまり一生けん命だったので、汗《あせ》がからだ中チクチクチクチク出て、からだはまるでへたへた風のようになり、世界はほとんどまっくらに見えました。
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